信頼をつくる『組織行動開発』

~応用行動分析学にもとづいた創造する組織の開発~

放っておくと「組織は内部の安心を創造し、信頼を破壊する」。方針や指示、規則に納得ができなくても、従うことで安心(感)が与えられる。安心(感)は非金銭的利益と金銭的利益の複合物。8割以上の個人は利益と負担感を比べ、自分の目先の利益が増える場合は組織に従う。利益は報酬。報酬は快。人間、行動した後に快が発生することをつづける。これは応用行動分析学の根本の理論。肌感覚で納得感がある。組織は個人が方針や指示、規則に背く・裏切る場合は罰を与える。組織の統制が強まる。組織は信頼関係で動いているわけでは無い。あるのは安心(感)という報酬・快の取引関係。この現実は本社や本部スタッフは理解できないケースが多い。彼ら彼女たちは、組織の中で1割未満の優秀な社員、ハイパフォーマー。8割以上の社員とは動機が異なることが理解できないことが多いです。その結果、各支社や支店が計数で具体的な数字で赤になるまで、問題が顕在化しない。

方針と指示、規則に従った方が8割以上の人達が「得(快)になる」ことがわかるため、嫌々ながらも協力行動をとる。裏切り者を探索する行動もとるため監視が機能する。嫌々ながらも「“みんな”がやっているから」などと思い、方針と指示、規則に従う。また、コミットメントも機能し、怒られない最低限ではなく“必要以上にがんばる”行動をする。あたかも自発的・自主的にみえるが、動機はそうでは無いことがわかる。「得(快)になる」と個人が思えない組織では、残念ながらコミットメントが機能しない。

また、組織が個人へ方針と指示、規則を与え続けることで、個人はそれらを処理することが目的になる。処理することで小さな達成感「終わった」が発生、処理することを継続させていく。達成感は報酬・快になるため。その達成感を得ることで、振り返ること、つまり思考することが無くなる。自分で決めること、つまり自責もなくなり、上手く行かない場合は「指示した人が悪い」と他責にする。悪気はない。面従腹背であっても組織の中でそれなり以上の機能を担うようになる。組織・集団の強みでもある。

しかし、組織が従業員に安心(感)を提供できなくなる、保証できなくなると、従業員から不信(感)が発生しはじめる。そもそも、信頼関係が無いため。一部の個人が、良かれと思い内部の安心感を無理につくりはじめ、外部の取引先や顧客、お客様との信頼関係が崩壊しはじめる。需要が今までのように取り込めなくなる。生産性は下がり続ける。そもそも、組織内部には安心(感)はあったが信頼は無い。

フレームワークを使い、現状を把握・分析する。現状の上手く行かない原因を「自主性」「自発性」「利他」「自己犠牲」「理念」「良心」「和」「絆」「愛着」「思いやり」などの意識や心が“不足”していることにする。これらの意識や心は、信頼関係があって機能すること。安心で機能し、信頼を必要としない組織では意識や心を復帰させても、機能しないことは明らかなこと。チームワークも同様。

組織が従業員に安心(感)を与えられない場合、従業員に目標設定やコミットメントなどをさせても機能しない。達成しない人が増えるため、成果報酬型で賃金に差をつける、ジョブ型で役割を明確にする。一部の人だけが機能する。組織は回らない。「それは私の仕事じゃないです」や「やらない〇〇が悪い」が発生、不信感が強化され、ますます生産性が下がっていく。目先の対処療法では、根本の問題は解決しない。根本の問題は、安心から信頼へ関係性を変えていく具体的な行動と思考を特定し、その数を増やしていくこと。では、どうすれば良いのか?

信頼を創る根本は「相手の利益をはかる」こと。相手の利益をはかるには、相手の立場・都合・行動・思考・感情・動機を肌感覚で知る必要がある。相手の利益をはかることで、自分の利益が得られていくことが実体験、肌感覚でわかるようになれば、信頼は機能しはじめる。自発的に行動や思考する仲間が増えていく。これらの言葉は誰でもわかるが、実際にできるようにするには体系だった訓練が必要になる。不信感が発生している組織の行動と思考を変えていくには、そもそも、内部の人達では何が問題なのかに気づくことができない。

人口が減少する事業環境では、組織の従業員に安心(感)を提供し続けることはできない。安心から信頼に変えていく必要がある。これらは創造・クリエイティビティを高めていく根本にもなる。私達は自覚はしていないが、安心で機能する集団で生きてきている。安心が機能しなくなった場合に打つ手が見つからない。そして、安易な対処療法を導入する。根本の問題は解決しない。

誰でもあたりまえに使っている”信頼”関係構築は、実は具体的にどうすれば良いかがわかっていないと考えるとモヤモヤが晴れていく。家庭や親族間も同様。友人、親友とラベルをつけている相手に対しても。

組織開発は人材開発の前提です。