組織の『行動モデリング』

~気づきを増やす組織行動の造形技術

“気づき”は社員が新たな行動と思考を獲得し、意識とモチベーションを高め、組織の目的を実現していく必須の経験です。この気づきを偶然に任せず再現性ある手段として組織で使うために行動モデリングは開発されました。

部下は「自分はわかっている」「できている」と思っている。上司はそうは観ていない。上司と部下は、経験が異なり肌感覚で得た記憶量にも差がある。肌感覚は言葉では埋められない。しかし、上司は部下に結果を出して欲しいと想い願い、結果に直結するやり方を言葉で伝える。上司が部下に結果に直結するやり方を部下のためを思い具体的な言葉で伝えれば伝えるほど、部下は「そんなこと言われなくてもわかっている、できている」とより思うようになる。上司が部下の前でやってみせるが、部下は何を観ていいか、どのように観ていいかわからない。それ以前に部下は「なぜ、上司が『自分がわかっている・できている』ことをわざわざやってみせているのか?」その意図がわからない。映像教材も同様。部下は具体的な経験をしないため、気づかず新たなやり方が身に付かず成長できない。組織と個人にとって損失でしかない。この状態を変えるため行動モデリングは開発されました。行動はモデリング(造形)することができる

上司は自分の経験の範囲で、部下に対してやれることはやった。上司は部下が成長しない原因を意識や心、人間性にもとめ思考を止めてしまう。意識や心、人間性は「できること・わかることが増えた結果、やる気・モチベーションがあがり、その後、変容する」もの。これは行動科学、応用行動分析学で実証されている事実です。意識や心、人間性は、モノゴトが思うように進まない真因ではないです。

手っ取り早い目先の対処方法で、月々の数字を効率的につくるために、管理や監視を強くする。報告させるための帳票を増やしていく。それでもダメなら罰則を科す。この場合、部下は叱られない最低限しか行動や思考をしなくなる決まったことを“最低限”やる習慣が身に付き目先を処理するようになり、その結果、相手のことを考えることをしなくなる。仕事は相手のためにするものだが、そのことを組織で仕事をすればするほど、忘れていく。本来であれば3倍まで増える行動や思考が1/3以下に下がってしまう。これは弊社ABAオペレーションズ研究センターが、各企業に関わり組織行動を変えてきた結果から言えること。これは損失でしかない。稼げる粗利金額が減ってしまう。

例えば、営業。取引先やお客様の「ニーズを把握する」「関係を構築する」。いずれも、あたりまえにふつうに使う言葉です。部下は「(売り込むために)どれだけの数量をいくらで、いつ、買ってくれるのか?」をニーズ把握としている。上司は「相手の事業目的が何で、まず解決する問題が何で、現状はどの程度なのか?」をニーズ把握としている。また、部下は「相手が会ってくれるようにする」ことを関係構築としている。上司は「相手が商品以外の事業に関わる相談をしてくれる」ことを関係構築としている。この言葉の意味の違いを、上司が部下に何度伝えても、部下の行動と思考は変わりません。肌感覚の記憶の差は、言葉では埋めることができないため。「ニーズを把握する」「関係を構築する」。いずれも、あたりまえにふつうに使う言葉ですが、「経験で得た肌感覚」には大きな開きがある。「言葉で伝える」「やってみせる」では限界がある。上司と部下の経験は異なる。肌感覚の記憶量も、目指す目的も異なる。目的が異なれば視座も異なる。経験、肌感覚の記憶、目的、視座が異なる上司と部下は、同じ言葉でも想い描く意味が異なる。上司が部下に「できていない」「わかっていない」と言葉で伝えても、部下のできること、わかることは増えていかない。上司が部下に伝える意味を部下に正確に理解してもらうには、部下に実際に経験してもらう必要がある。これは避けられない。しかし、部下は「できている」「わかっている」と思っている。どうすれば、部下が経験をして、上司の言っている言葉の意味に気づき、肌感覚で理解できるようになるのか?

大切なことは「部下が自発的になるまでは『やる行動が具体的にみえる』」。特にはじめの一歩の行動が、

  1. 具体的に頭ですぐにわかり
  2. すぐに記憶ができて
  3. やってみる負担感が無く
  4. やることで得られる快が想定できる

1から4がそろうことで、部下の行動が始まり経験し「わかっていなかった」「できていなかった」に気づく。“思考”の場合は、「何を見るのか?」「どう観るのか?」「なぜ、それが重要なのか?」を1から4にあてはめる。

部下が「(自分は)わかっていなかった」「(自分は)できていなかった」に気づく。それが肌感覚で記憶されることで、上司からのアドバイスを聴く、耳を傾けるようになる。経験をして肌感覚で「できない」「わからない」をえてはじめて、知識や技術を受け入れるようになる。試行錯誤がともなう問題解決をやってみるようになる。そして「できなかった」ことが「できる」ようになる喜びが、新たな経験を増やしていく動機になる。その先に人のために働くことで得られる大きな達成感を経験、実感、より経験しながら学習する習慣が身に付く。思考と行動の量が、管理監視されていた時よりも少なくとも3倍は増える。効果と効率の両方が高くなる

「先が観えない」「したいことがない」と言う部下であっても、「何を目指していくのか?」「望ましい状態は何か?」が、やってみて自分の経験の肌感覚で「それは違う」が積み重なっていくことで鮮明になっていく。試行錯誤を続けることができるようになる。行動科学や応用行動分析学ではこれを「報酬の先取」と言う。

【参考:人間の行動テクノロジー:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000068315.html】

教える行動は組織の維持・成長を阻害する。「教える」行動は、上司が目先の優越感を得てします。優越感は快・報酬になる。上司と部下の関係において、上司の快・報酬の本質は、部下が「わかった」「できた」そして「結果が出た」状態です。目先の快・報酬から、より先々の快・報酬を欲するように、管理監督者を育成していくことが、組織の階層を機能させていくポイントです。したがって、教える行動はしない方がよい。