「なぜ?」の問いが1回で終わってしまう。思考が深まらない。ではどうする?

環境が変わる。今までとは異なる具体的なやり方が必要になる。新たなやり方をつくるには「なぜ?」の問いかけが必要になる。今までの自分のやり方に対して「なぜ、そうなのか?」。今までの自分のやり方は、常識、ふつう、あたりまえ。この自分の常識、ふつう、あたりまえが新たな環境への適応を阻害する。常識という阻害要因を取除くために、まず「なぜ、そうなのか?」が必要になる。

しかし、分業化が進んでいる組織では、このなぜを1回で終えてしまうケースが散見される。なぜが1回の場合、常識の範囲を越えることはできない。自分の常識の範囲でなぜを結論づけてしまう。物事を常識化する目的は、お互いの共通認識をつくり、やり取りの量を減らし、質の高いアウトプットを速くつくるため。常識がなければ、都度、相手とすりあわせをする必要が発生し、成果物を創る時間が増えてしまう。

なぜ、このような思考をしてしまうのか。その原因はそもそものインプットの不足にある。分業化が進むことで、分業内で必要なインプットは固定化される。インプットが固定化されると、その業務についた時点では、未知なものが圧倒的に多い。その結果、インプットを意図的に、意識的に行う。しかし、ある程度慣れてくると、インプットすることが習慣になる。習慣化されたインプットは、分業化された業務の範囲“内”のもの。その結果、自分の業務の範囲“外”のインプットをしなくなる。その結果、「なぜ?」が1回で結論にいたる。

では、この状態をいかにして越えていけるのか。まずは、自分の業務の周辺に目を向け、他の職種の人がやっているインプットを取り込んでいくこと。

インプットが変わらなければ、現状を比較することができない。現状を比較できないと、現状の問題点に気が付くことができない。「視点を上げる」「視野を広げる」「視座をあげる」など言葉がある。しかし、具体的にどうすれば良いのか?それを理解して実践できている人は、分業化されて組織の中では10人中1人いるかいないか。戦略構想のフレームワークを身に付けても、「視点を上げる」「視野を広げる」「視座をあげる」ことはできない。そもそものインプットが固定化されているため。

「なぜを深掘りする」。「深掘りが浅い」。というやり取りもインプットの不足に起因している。

「想像力が不足している」。これもインプットの不足が原因。

まずは自分の周辺の職種の人達のインプットを、自分に取込む。そして、

「なぜ、そのインプットが必要なのか?」

「そのインプットは具体的に何に使えるのか?」

この2つの問いを自分にかける。

この2つにより、想像力も徐々に高めることができる。

組織の中で、分業化された業務に習熟すればするほど、想像力を使わなくなる。想像力を使わなくとも、解くべき問題と解き方がパターン化される。パターン化され、対処の速度を上げていく。生産性が高いと評価される。ますます、想像力を使わなくなる。

このような状況で、挑戦、チャレンジ目標、イノベーションと言っても、実現されることはない。インプットの不足、想像する回数の不足。創造が発生する前提条件が不足するために。