”自分のために”人と組織のためになる40代以上の人

分業化された組織の中で、プレイヤーとして結果を出してきた。やり方を具体的に教えられることもなく試行錯誤しながら、改善し、よりミスなく、より速く成果を出せるスキルを身に付けてきた。そして、人をマネジメントする、リードする立場になってきたい。

しかし、環境が変わり、部下に提供できるノウハウが無くなっていく。過去に身に付けたやり方は、過去の需要への対処方法。今の需要に適合しない。ノウハウを部下へ教えることで、部下を掌握することが難しくなっている。部下は担当者・プレイヤー。担当者・プレイヤーは残業時間に限りがあり、深夜から朝まで関わり暗黙知を暗黙知のまま、夕飯を一緒に食べながら継承し掌握することはできない。そもそも、部下を教え、育てることに長けていない。自分自身が体系的に教え、育てられてきていないため。このような40代以上は10人中9人以上。では、どうしていけば良いのか。

1. ”育った環境が異なる部下を残業させずに”教え育てるスキルを磨きマネージャーを目指していく

2. 環境が変わり需要が変わる。できる限り時間を投入し新たな需要創造をするプレイヤーから始める

仕事はジョブ型。担当者・プレイヤーの分業組織内での職務は明確に定義できる。現場サイドからは「できない」と声があがることもあるが、行動を観察し、思考を推測することで、95%は標準化できる。残りの5%は応用・発展の領域のため、標準にする必要はない。管理者の職務に標準ができた部下の思考を促す具体的なやり方を組込、計測すれば良い。

マネジメント層の職務の定義は簡単なようで簡単ではない。計測するコンピテンシー・行動は明確になるが、人が育つまでには時間がかかる。数カ月で明確な結果がでることは稀。評価がしづらい。数カ月で結果を出せる部下は、そもそも育成対象者ではない。

そもそも、人を教え育てる組織の行動習慣・文化があったとしても、リモートが業務の手段の1つとしてふつうになることで、人を教え育てるやり方の見直しが必要になる。一方で、デジタルデバイスのお陰で、マネジメントできる範囲が広がる。必然的にマネジメント層の人数は過去よりも少なく済む。そもそも、人を教え育てる文化・習慣を維持・向上できる体力のある組織の数は減る。今までの需要が減少するのは明らか。新たな需要創造に着手できている組織は圧倒的に少ないため。

担当者・プレイヤーは、自力で職務定義を実践せざるおえない組織も出てくる。教える立場にある40代以上の管理監督者が、教え方が身に付いていない以前に、そもそも教える内容を持っていないことが発生している。環境が変わること今までのやり方では結果がでないため。

このような環境の中で、40代以上はどのような役割を担っていけば良いのか。

最も問題があることは、40代以上が仕事・顧客を囲い、30代以下に渡していかないこと。自分の過去の経験と知識を過信し、30代以下の考えを今とこれからを根拠にせずに否定し、小さな自尊感情を高めようとすること。

仕事・顧客を渡していかなければ、30代以下が育つ機会が不足する。30代以下がどれだけ自発的に流通している知識や技術を自学自主しても、それを組織で活かすことは難しい。流通している知識や技術は、そのままでは活用できない。固有の実務に適してカタチに具体化する必要がある。そのためには、実際の仕事・顧客に対峙する必要がある。「自ら仕事を創るように」と言ったところで、それは簡単なことではない。コンプライアンスなどがそれを阻害する。したがって、40代以上が抱える仕事と顧客を、40代以上が手放す必要がある。手放すためには、相手のレベルを観察し、具体的なやり方を渡し、見守り、徐々にできること、わかることを増やしていく必要がある。「あとはよろしくお願します」では、30代以下へ成長の機会を渡すことにはならない。担当者・プレイヤーの多くは、残業時間に限りがある。

30代以下へ仕事と顧客を具体的に渡することに、並行して新たな需要を開発・開拓・創造するやり方を身に付ける必要がある。ローパフォーマーから出発する必要がある。人間、やったことがないことをはじめる時は、誰でもローパフォーマーになる。過去に身に付けたことは9割以上は、すぐには使えない。出番がない。やり方がわからないまま、他責をつづける場合は、ローパフォーマーから抜け出せない。

企業側も「挑戦テーマを掲げるように」「イノベーションが大切」などと言うだけでは、この状況は推進されない。40代以上が仕事と顧客を様々な理由を見いだし、手放すことを回避する。不安は人の行動を減らす。

外部から事業開発ができる人材を探してきても機能はなかなかしない。組織内の行動・思考パターン、つまり組織の常識を一旦身に付ける必要があるため。それを身に付けないと、組織内の人は動いてくれない。ジョブ型があたりまえになれば、外部から取り込むことはできなくはないが。

企業側、40代以上、30代以下。それぞれ、やることがある。一旦、組織の常識を具体化して、継続する常識、捨てる常識を明らかにする。常識は既にある過去に創造された需要をミスなく、より速く対処するために抽象化されたやり方。その常識が40代以上の挑戦、イノベーションを阻害してしまう原因の1つ。

40代以上はお金を稼げる範囲の中で、まず、やったことがないことをやってみる。

「それをやっている他社はどこか?」「それをやるとどのような効果があるのか?」と「失敗しないにはどうすれば良いか?」を精緻に想像しても新たな需要創造はできない。限られた時間、限られた資本の中で、やる回数を増やし続ければ、成功確率は上がる。もし、それでダメだとしても、次につながるノウハウが蓄積できる。その蓄積がなければ、どのような職務も担うことができない。

まず、やったことがないことをやる。1日15分でも、やったことがないことをやり続ける。それが、新たな需要を創造する習慣形成の第一歩です。