オンラインがオフライン、直接対面での接触に入ってくる。直接対面での接触時には、物理的な空間がある。その空間の中で誰がどこに座るのか、1人1人が組織文化に根差した忖度により決められる。上座に座る人は、多くの場合、役職が高い。役職が高い人はより広く影響力のある意思決定権を持つ。その人が参加者の価値創造を促し強化できるスキルを持っている場合は、問題は発生しない。迅速に物事が進み、人の自社のお客様が必要とする価値創造が行われていく。
役職が高い人の中には、組織・チーム・メンバーの価値創造を誘発・強化できない人もいることは周知の事実。その人の顔色をうかがうのは組織で生き残る技術。しかし、この顔色を伺う行動は、自社のお客様が必要とする価値を創造することに直結しない。決められず時間が浪費されていく。環境が変わらなければ、需要は変わらないため、今まで先人が確立してきたやり方を正確に踏襲していけば良い。それがもっとも効果と効率が良いため。
しかし、環境が変わった場合、この状態がつづくことで、自社の業績は下がり続ける。今までの需要は減少している。もしくは消えている。その状態で先人が確立したやり方を正確に踏襲していては、社員すべての生活ができない状況に落ちていく。分業化された組織は簡単には変われない。1人1人も簡単には変われない。口では「挑戦」「イノベーション」など発することはできる。しかし、今まで時間をかけて身に付けてきた行動と思考パターン、習慣は簡単には変えることができない。そもそも、自分自身の行動・思考パターンを顕在化できる人は10人中1人いるかいないか。環境が変わると、悪気なくムダなことをしてしまう。良かれと思ってムダなことをしてしまう。
オンラインがこの状況に入ってくることで、ムダの発生が是正されていく。オンラインでの打ち合わせの画面では、1人1人が組織文化に根差した忖度による席次づくりができなくなる。打ち合わせに入ってきた人から順番に画面上に、同じサイズ・枠で表示されていく。新たな入ってきたメンバー、外部メンバーは、誰が組織上、影響力があるかがみえなくなる。1人1人の発言がオンラインの場の序列になっていく。
画面上の相手の発言から、
・相手が何を必要としているのか?
・なぜ、そのようなことを言うのか?
・そもそも、何が言いたいのか?
発言をインプットにして、想像していく必要がある。想像力の高め方を身に付けていない人にとっては、ますます存在価値がなくなっていく。オフライン、オンラインであれ打ち合わせをする目的は、解くべき問題を特定し、その解決をすることにある。解くべき問題は、自社のお客様・取引先の価値を創造するため。目的と背景を想像する必要も出てくる。
オンラインではこれらを想像できる人は、発言がしやすくなる。その発言を否定することなくインプットにして、最終ゴールのお客様・取引先の価値創造につなげていける想像力と創造力がますます必要になっていく。組織上の序列が、顧客価値創造に直結していない場合、適切な状態になっていく。
顧客価値創造ではなく、自分の自尊心を満たすための発言が出ることもある。その前段に、他の人の発言への否定が起こる。多様な意見は想像・創造するためには必要な要素。人の意見はインプット。インプットを増やすことは創造の必須条件。他者のインプットを否定することは、創造を消し込むことにつながる。したがって、組織やチームの創造性を高めていくには、自分の自尊心を満たす自律できていない、つまり、自己肯定感と自己効力感が低いメンバーは、ますます必要がなくなっていく。多様性を許容する前提には、1人1人が自律できている必要がある。この前提がない場合、多様性は成立しない。
オンラインが少しでも仕事に入っていくことで、1人1人に
「あなたは何ができるのか?」
「それはお客様・取引先の価値創造に貢献できるものなのか?」
「そもそも、その価値創造は、今のお客様・取引先が必要としているのものなのか?」
このような問いかけが暗黙のうちになされていく。
人が相手のために働く、仕事をする。それ以外のことはなくなっていく。
相手が必要としていることを想像する。そのためにインプットを増やす。
インプットは否定する対象ではなくなる。発想を広げるための素材に変わる。