芸術家は作品を制作し人に問いを投げかける。目の前に解かないといけない問題があると「その問いの解決策も出して欲しい」とつい思うことがある。しかし、問いの解決策まで創ることは、芸術家の事業ドメインではない。人のあたりまえに処理してしまうこと、”知らないことを知らない”ことに光をあて、人を立ち止まらせる機能はすばらしい。スマートクリエイティブマネジメント®は、芸術家の方々の思考・行動パターンの観察、実験検証の結果にも基づいて体系化されている。
ビジネスの場には様々の問題がある。問題が発生する。組織の中ではその問題をミスなく速く解決できる人が優秀だと評価される。組織はすでにある需要に効率的に対応するためにある。まだない需要を創造するためには組織は存在しえない。すでにある需要に対処するため分業化されることで、解くべき問題の幅は小さくなっていく。学習効果が機能し、より効率的・効果的に対処できるようになぅっていく。一方で、解いている問題に対して”問いをかける”ことは、ほぼない。
「そもそも、なぜ、その問題を解くのか?」「その問題を解くことで何をしたいのか?」「その問題よりも解くべき問題があるのではないか?」。このような問いを発する人が分業化された組織の中にいた場合、周囲の人と上司はあつかいづらい人とラベルを貼る。「そんなことを考える前に、さっとさと問題を解いてくれ」と思う。もしくはそう言葉で伝える。
このような問いをまだ、組織の常識、お客様・取引先の常識を身に付けていない、その職務に必要な基礎・専門技術と知識を身に付けていない人がする場合、「まだわかっていない状態なんだから、まずはやって欲しい」となる。これは正しい。
目の前の問題への問いかけは、創造力・クリエイティビティに必要なもの。創造・クリエイティビティを高めていくには、その仕事の常識、基礎・専門技術と知識を身に付ける必要がある。身に付けていない場合、その問いはお客様・取引先のためにならない。創造・クリエイティビティはお客様・取引先の問題を今よりもより良いやり方で解いていくために使う。
一方で常識やルール、固定観念は、創造力・クリエイティビティを阻害する機能がある。しかし、これらの前提がないと創造・クリエイティビティは発揮されない。問題なのは、これらの阻害要因が何かわからずに、目の前の問題を解いてしまうこと。「それは常識」「ふつう」「あたりまえ」と抽象化してしまうこと。
創造力・クリエイティビティを高めていくには、前提条件に気づいていくためのインプットを増やし、先々の絵を描く。先々の絵がないと前提条件気づくことは無い。そして、足元の前提条件に問いをかけ、何が阻害要因なのかを考えていく必要がある。この前提にある阻害要因が何かを問いかけることで、ほんらい解くべき問題があきらかになっていく。本来とくべき問題を明らかにするために問いかける必要がある。それがビジネスで必要な創造力・クリエイティビティを高めていく入り口。
前提にある常識やルール、固定観念を知っている。身に付けている。その上でそれらを取り払う問いかけをする必要がなぜあるのか。仕事には多くの人が関わる。お互いに暗黙の内に共有しているものを知らずに、問いかけることで、相手が傷つくことがある。相手の自尊心が傷つくことがある。相手を追い込んでしまうことがある。それでは相手の行動と思考の量が減っていってしまう。相手の行動と思考の量は増やす必要があるにも関わらず。心理的な安心が無い環境では、創造力・クリエイティビティを高めることはできない。心理的な安心が発生しない環境では、人は小さなミスを恐れ、自分の行動・思考の習慣の中の必要最低限の事だけをするようになっていく。
前提にある常識やルール、固定観念を身に付けることで、目の前の問題解決が速くなる。創造力・クリエイティビティを高めていくには、まず、これはできるようにする必要がある。ここで問題になるのは、目の前にある問題を解決できるようになると、問題が目の前に発生した場合、条件反射で問題の解決策を考えるようになる。環境がかわり、そもそものお客様・取引先の需要が変わっていく場合、このすぐに問題の解決策を考える習慣が問題を生み始める。目の前の問題を解いても、それが価値を生まなくなる。もしくはそもそも解くべき問題がなくなる。
需要が変わる。つまり、必要とされることが変わる。本来解くべき問題が何かを問いかけ、明らかにする必要が出てくる。しかし、今まで、問題の解決策をすぐに考える習慣をつけているため、「そもそも、なぜ、その問題を解くのか?」「その問題を解くことで何を実現したいのか?」「その問題よりも解くべき問題があるのではないか?」と問いかけることが、できなくなっている。その習慣をそもそも持っていない。もしくは、組織上の階層が上がるごとに、この習慣は消してきた。
今までとは異なる事業環境になる。その場合、すでにある問題の解決策をすぐに考え対処する習慣が機能しなくなる。その問題解決に需要がなくなるため。
芸術家の問いを創るスキルが必要になる。インプットを増やし、先々の絵を想像し描き、足元への問いを創り、現状に投げかけ、本来解くべき問題を具現化するクリエイティブシンキングは、身に付けていると需要の転換期を生き残ることができる。