例えば、専業でやって習熟するまでに2年はかかる技術・技能を多くの人が身に付けるには、どうすれば良いか。専業でやって習熟すまでに2年はかかる技術・技能は、専業でやっていない人が習熟するには5年から10年は必要になる。そこまで続けられる人は、ほぼいない。小さな達成感が得られ自己効力感が高まる、承認され自己肯定感が高くなる、そのようなことが発生しないため。
特に営業から受注まで、納品から入金までに2年以上必要なインフラ系のビジネス。成果が計測しづらく評価されづらい社内のデジタルインフラを敷設する部門。
これらの仕事に携わる人たちが、誰かに教える場合、自分達と同じようなレベルで達成感や承認を得ていると錯覚する。
例えば、デザインから現場施工までを一気通貫させるようなソフトウエアを全社へ導入する部門。
ステップ1. 基本操作をおぼえる。
ステップ2. 基本のテンプレート(プロジェクト)のつくり方を身に付ける。
ステップ3. 基本のモジュール(ファミリ、部品・部材)のつくり方を身に付ける。
ステップ4. それから各現業で使うための実務への転換
ステップ1から3までに、多くの人が息切れしてしまう。小さな達成感を得られないため。伝える側の熱意が伝染し、続けられたとしても、ステップ4に入ったと同時に息が切れ、失速する。
わかりやすい例として英語を身に付けるを考えてみる。
ステップ1. 英文法を記憶する。
ステップ2. 英単語を記憶する。
ステップ3. 英熟語を記憶する。
ステップ4. 日常会話ができるようにする。
ステップ4までたどり着ける人は、よほどのやるべき理由、動機がある人だけ。10人中1人いれば良い方。では、どうすればより多くの人が続けられるようになるのか。
ステップ1. 外国人向けのレストランで注文し会計を済ませるまでの一連の基本フレーズを記憶する。
ステップ2. その一連の基本フレーズを実際に外国人向けのレストランで使ってみる。
ステップ3. 英文法を記憶する。
ステップ4. 関連する英単語と英熟語を記憶する。
このステップに変えることで続きやすくなる。なぜか。ステップ1でおぼえる量は少ない。ステップ2でほぼ確実に小さな達成感が得られる。ステップ1で努力したことが報われる。その結果、もっとやってみようと、人間、やる気になる。モチベーションがあがる。
参考:英語学習は継続がカギ「行動科学マネジメント」で続ける技術に迫る
モチベーションがあがるため、はじめはおもしろくない、楽しくなかった英文法や英単語、英熟語を記憶しようとしはじめる。レストランから、プレゼンテーション、会議でのディスカッションとステップアップを続けやすくなる。
ある業務に習熟した人にとってのふつうを前提にした教え方は、そうではない人にとっては続かない。興味がわかない、楽しくないため。誰かが、誰かに教える目的に立ち返る必要がある。目的は相手に動いてもらう、できるようになってもらうため。動く、できるためには小さな達成感もしくは小さな承認が必要になる。
伝える側がどれだけ相手のことを、相手の先々のことを、考え思い熱を込めて伝えても、その伝え方が間違っている場合、その時間と熱意はムダに終わる。これはとてももったいない。気持ちや熱意、精神は大事。それ以上に大事なことは、相手が半歩でもやったことがないことをはじめること。人間、少しでもはじめることで気が付く。気が付けば現状の問題にも気が付くようになる。問題に気が付くことで、新たなものごとを吸収する動機が芽生える。
相手のことを想像することは難しい。しかし、想像する手がかり・考え方はある。