具体的な行動を誘発・強化できるKPIの設定が大切

デジタルマーケティングを進める際にKPIを設定する。しかし、KPIの多くは管理者が全体の進捗を確認する機能が強い。数字をつくるために日々、行動をする現場の担当者の行動量を増やす機能が不足している。

デジタルマーケティングを使い、リードが育っていく。しかし、育ったリード(以下、見込み顧客と表記)を受取り、その見込み顧客と関わり、売上をつくっていく営業担当者のKPIに“提案件数”、“プレゼン件数”、“見積提示件数”が設定されることが多い。管理者にとっては進捗がわかるKPI。しかし、10人中7人以上の営業担当者は、このKPIがあることで、せっかく育った見込み顧客を不快にし、売上がつくれずにいる。

なぜ、このような状態になるのか。「提案しておけば良い」「きれいなプレゼンをしたら良い」「見積もりさえ出しておけば良い」と行動を誘発されているため。KPIの数字が増えていくことで、この表面的な行動が強化されていく。営業担当者に悪気はない。管理目的のKPIに問題がある。PDCAを回す。これも機能しない。そもそも、PDCAを回せる人は10人中2人いれば良い方。SFAを導入してもパフォーマンスが変化しないのも同じこと。

そもそも、提案は見込み顧客から「じゃ、どうしたら良いですか?」「どんな商品があるんですか?」などの言葉が発生した直後に行わないと、提案は見込み顧客にとっていらないものになる。いらないものを買う人はいない。必要性を持てていない相手は、プレゼンを聴いていない。はやく終わって欲しいとしか思っていない。提案件数をKPIに設定すると、この言葉を見込み顧客に言われない状態で提案をする。見込み顧客に嫌われると次の接点は、機能しなくなる。次の接点が消えてしまうこともある。特にオンラインが営業プロセスに入ってくると、相手を拘束できなくなるため、成約の確率は同じやり方をしている限り減少していく。

プレゼンも同じこと。いくらすばらしいプレゼンをしても、まだ、内容に興味がない顧客にどれだけきれいなストーリーのあるプレゼンをしても、顧客は眠たくなるだけ。その結果、顧客との関係は悪くなる。デジタルマーケティングが機能しなくなる。


エンジニアリングマーケティングに基づいた
リード顧客を受けった営業担当者の望ましいKPI例①:

顧客から「どうししたら良いですか?」
もしくは「どんな商品があるんですか?」と言って頂いた数


では、顧客から「どうししたら良いですか?」もしくは「どんな商品があるんですか?」と言って頂くには、どのようなKPIを設定すればよいのか?

まずは、60分間の商談であれば前半の20分から30分は、顧客の話を聴く。顧客に気持ち良く話をしてもらうことが必要になる。気持ち良く話を聴いてくれる人のことを人間、好きになる。関係構築ができる。しかし、顧客に気持ち良く話をし続けてもらっても売上数字をつくることはできない。

顧客の話に関連する他社の取り組み事例を具体的な行動事例で伝えていくことが必要になる。他社の詳細な取組事例は、今後、導入頂く商品の説明の機能がある。しかし、顧客は売込まれていると認識はしない。


エンジニアリングマーケティングに基づいた
見込み顧客を受けった営業担当者の望ましいKPI例②:

見込み顧客に気持ち良く話をしてもらう相槌
「はい」「そうですね」「それやった方が良いね」の数


エンジニアリングマーケティングに基づいた
見込み顧客を受けった営業担当者の望ましいKPI例③:

見込み顧客に気持ち良く話をしてもらう中で他社の具体的な行動事例を伝えた回数


このKPI例はオンライン営業、オフラインの直接対面営業でも同じように機能する。オンラインでもオフラインでも相手は感情を持つ人間。嫌いな人の話は聴かない、そもそも、合わない。不快になる人も同じ。好き・嫌い、快・不快。

相手の好きをつくるための一連の具体的な行動と思考パターン。

相手が快にする一連の具体的な行動と思考パターン。

このパターンは他社で上手くいっているものを借りてきても機能しない。各社固有のパターンがある。その固有のパターンがあるからこそ、自社がお客様に選ばれている。固有のパターンを逃すと、結局、どこから買っても同じとなり、価格勝負になり、利益が削られていく。

取り扱い商材、業界構造、市場によってKPIの修正は必要になる。しかし、通常、使われる“提案件数”や“見積提示件数”では、せっかくデジタルマーケティングで育てた顧客を売上につなげることができない。

マーケティングをデジタルで自動化することは大切です。しかし、自動化と並行して、見込み顧客を受取る営業担当者・販売担当者に望む行動を誘発し、強化する仕組みの企画、実験検証をしておく必要がある。そうしていかないと、マーケティングのデジタル化の投資はムダな投資になる。

見込み顧客も営業担当者も感情がある人間。きれいごとや正論、自分で決めていないこと、面倒くさいことはやってくれない。圧力で行動をうながしても、つづくことはない。見込み顧客と営業担当者の心理を読むことも機能しない。心理を読んだところで、相手の行動は変わらない。

※上記の数字とKPIは、エンジニアリングマーケティング総合研究所で実験検証した結果です。