常識の使い方

常識は目の前のものごとを効率的に対処する手段。

もし、常識がない場合、お互いに了解事項をその都度、詳細に確認しすり合わせる必要がある。これではモノゴトが前に進まない。この問題を解決するために常識がある。

組織や業界の常識を学習し、習慣になり、条件反射で使いこなせるようになる。仕事をこなすスピードが上がり、生産性が上がる。しかし、事業環境が変化し始めると問題が発生する。条件反射化された常識の中で、機能しなくなるものが出てくる。条件反射化されているため、どの常識が機能しなくなっているのかがわからない。

以前、依頼を受けたクライアント先で、営業社員の行動観察と行動の機能分析をした。

フルタイムで仕事をする正規社員の営業。

パートタイムで9時から3時で仕事をする契約社員の営業。

契約社員の女性は、年間10億円の売上を、9年間継続してつくり続けている。これは、正規社員の営業と契約社員の営業の中で、トップ、No.1の数字。

正規社員の営業を行動観察と行動の機能分析をした結果は、否定する箇所がない、業界で一般的に流通している営業のやり方。業界と組織で常識とされる一連のやり方。

一方で、営業組織の中でNo.1の数字をつくり続けている契約社員の営業は、正規社員の営業方法とは大きくことなっていた。常識ではない。しかし、このやり方が結果を出す。以下、その一部。

その組織や業界で常識とされるやり方は、多くの人達は否定しない。この契約社員のやり方を私もまねてやってみた。業界の素人の私が初日に受注ができてしまった。この契約社員のやり方を機能分析をした結果、極めて、人間の行動原理と原則にかなっている。理にかなっているものであることも、わかっていた。このやり方をみた正規社員の営業は、このやり方に不快感を示した。自分達の常識が否定されたため。極めて人間らしい反応をする。

事業環境が必ず変わる。自分自身が身に付けてきた知識や技術の中に、機能しなくなるものが必ず出てくる。しかし、人間は何が機能しなくなっているのかを特定することができない。

常識は目の前のものごとを効率的に対処する手段。環境が変わることで、目の前の物事は、とうぜん変化する。やり方も変える必要がある。“逆張り”という言葉があるが、ただ単純に常識の真逆をやれば良いというわけではない。目の前のお客様や取引先様を観察し、観察から得たインプットを使い想像をしていく。想像されたイメージをシミュレーションしていく。簡単に言えば、観察し自分の頭で考える。

このように進めた行かないと、環境変化を機会、危機を機会に変えていくことはできない。機会を逃す根本の原因は、組織・業界・個人の常識の中で、機能しなくなっているものに気づけないことにある。気づくためには想像のやり方を体系的に身に付けることが必要になる。その教育がアートスクールの一部では行われている。