長く続く商売の根本は、相手と自分は一蓮托生の関係

7年程度、大手企業から各地区を代表する中堅企業の部下育成に優れたマネージャーの行動観察をほぼ毎日のようにしていた時期がある。その中で、今でも強く記憶に残っている大手製薬メーカーのマネージャーの言葉がある。

「私と部下は一蓮托生ですよ」

一蓮托生。結果に関わらず、運命をともにする関係性。このマネージャーは40代前半。この境地に至るまで二、ずいぶんと痛い目に会ってきたことがわかる。その結果、行き着いた境地が「私と部下は一蓮托生」。

この境地に到達できるマネージャーは極めて少ない。

イレギュラーの発生が少ない業務、パターン化ができる業務は、このご時世、機械化・デジタル化が進む。その方が、人間が取組むよりも生産性が高いため。

既存の需要へ対応する、既存の業務を遂行する場合、やり方はパターン化されていく。人間「自分は特別なことをしている」と思い、自尊心を高め、自己肯定感を持とうとする。しかし、彼ら彼女達の行動を観察していると95%以上はパターンでやっていることがわかる。目にみえる行動にせよ、目にみえない思考にしても。この95%は機械化・デジタル化・自動化ができる対象になる。

「私は特別なことをやっている」と思いたい気持ちは理解できる。しかし、それではいずれ役割が無くなるのは明らか。

人間、快に近づき、不快を回避する。つまり、人間、根本では感情で動く。理屈や正論を持ち出したところで、その場は納得したような空気になるが、時間がたつと納得感は無くなる。嫌いなものは嫌い。「大人なんだから」と正論を持ち出しても、残念ながら結果はみえている。

一蓮托生の関係性は、機械化・デジタル化・自動化は、できない。「○○さんが、そこまで言うのなら、わかった(わかりました)」。この関係性。相手の利益をどこまで想像し、各人異なる相手を動機づける。極めてクリエイティブなこと。

相手の利益をできるかぎり一所懸命に想像して、相手に関わる。相手からすれば「それは違う」と思うことであっても、周囲にそこまで自分のことを思い考えてくれる人がいない場合、嫌いにはならない。何とかしてあげたいと思う。これも人間の感情。

効果のあるやり方の効率を上げる。生産性は上がる。生産性が上がることはパターン化ができる。パターン化ができることは機械化・デジタル化ができる。人間がやるより機械の方が、生産性が高い。

このような環境の中で、大切なことは人間の感情。人間は快に近づき、不快を回避する。それが常識になっていく。常識化するインフラはデジタル。

相手のことを想像する。相手と自分は一蓮托生。相手の利益が増えることで、自分の利益も増えていく。利益は金銭と非金銭がある。金銭はお金。「○○さんと話していて、もやもやがすっきりした」これは非金銭。

この考え方に移行していくことが、今の時代に、必要になっていきている。

売上をつくることは大切。それが無ければ給与や賞与を支給する原資が無くなるため。しかし、相手の利益をつくることを想像せず、自分の利益を優先した場合、関係は一蓮托生にはならない。いつでも関係を切られる、もしくは切れない場合はできるかぎり仕入原価を下げられる。そうなっていく。すでにそうなっていはいるが。