リーダーは新たな部下には「考えさせること」から始めない

リーダーが部下のできることを増やし自発的にしていくにはステップがあります。「1.部下に信頼してもらう」「2.個別具体的な仕事の基礎を身に付けてもらう」「3.できることを1つずつ増やしてもらう」「4.相手を想像し思考できるようになってもらう」。今まで、このステップにそってお話をさせていただいています。

ここでとても大切なことがあります。ステップ4「相手を想像し思考できるようになってもらう」。この相手は仕事で関わる自分以外の人達のことです。仕事は誰か特定の相手が抱えている問題、実現したい状態がありそこに近づくための課題を解決するためにやるもの。特定の相手のことを、相手の立場から想像して、自分がやろうとしていることに対して、相手がどう思うのか、どう感じるのかを想定し、自分のやろうとしていることを見直していく。自分の立場から、自分の都合からでは、仕事とは言えないです。

リーダーの多くは良かれと思って、部下の成長を願い、部下に考えさせることをすると思います。しかし、リーダーの想定は大きく裏切られてしまう。「なんで、こんな簡単なことなのに考えられないの?!」「なんで、こんなに大事なことを処理するの?!(ちゃんと対応しようよ)」など。なぜ、こうなってしまうのか?

部下は部下の経験と知識の範囲で、できるかぎりのことはやっている、がんばっています。あくまで部下の経験と知識の範囲。リーダーの経験と知識の範囲とは大きく異なります。リーダーが良かれと思って部下に考えさせようとすればするほど、部下はリーダーに対して不信感を抱くようになります。「(私は)ちゃんとやっている」「ちゃんと考えている」。不信感が出はじめると、不信の感情が頭を占領し、ふだんはしないようなミスをしてしまうことがある。その部下との関わりがさらに業務上の関わりだけになっていく。できる限り「〇〇さん(部下)には関わりたくない」。こうなってしまう原因は、そもそも、リーダーが部下に、よかれと思い考えさせることにあります。

考えられるようになるには、ステップを踏む必要があります。その仕事のあたりまえができるようになる。特に私たちの仕事は人に関わる仕事です。人に不快感を与えるような行動ではなく、人が心地よいと感受する行動が必要です。笑顔もそうですし、かける言葉もそうです。このような基本ができて、そのうえで、介護をするための基本ができる。それからようやく、個別の具体的な問題解決のやり方を考えていけるようになる。

焦る気持ちはわかります。しかし、焦ってステップの1と2、3を飛ばしてしまうと、結局、ムダな時間が発生してしまいます。部下が辞めてしまえば、またゼロに戻る。目先の効率を追求することも大事ですが、こと人に関しては目先の効率の追求は、先々の非効率を生みます。その非効率を減らしていくために、このステップをできるかぎりおさえて欲しいです。簡単なことでは無いと思いますが、リーダーは部下の都合を時には優先することがあっても良いです。お互い、感情を持つ人間ですので。