“できていない原因”を問いかけない

部下が問題を起こす。「なにやってるの!何が原因なの?!」もしくは「なんぜ、そんなことした?何が根本の原因なのか、教えてください」のような言葉がリーダーの口から出る。部下から苦し紛れの返答がだされる。その直後に「以後、気を付けます」「肝に銘じます」「申し訳ございません」と言う部下もいれば、「私は悪くないと」言葉にはしないが、明らかにそう思っていると想定できる部下もいる。

このやり取りをしていても、問題の再発防止にはなら“ない”ことはリーダーをしていればわかると思います。問題6割から7割は、同じ人が起こしている。そもそも、部下の経験値と知識の範囲では、視座が低いため、問題の根本原因は特定できない。根本原因は人間の疲労や感情の乱れになることが多い。根本原因がもし特定できたとしても、再発防止策が「〇〇を徹底します」「〇〇に注意します」「意識づけをします」のような精神論になってしまい、具体的な行動や思考を変えていく打ち手にはならないため。具体的な行動や思考を変えることで、感情や意識を変えていくことができる。また、リーダーが部下のミスの原因を追究する目的が、いつのまにか部下に謝罪させるになってしまうこともある。気持ちはわかりますし、私にも経験がある。

問題が起きてしまった場合「この忙しい時に、何をしてくれたんだ!」のように怒る気持ちはわかります。しかし、ここで怒りを爆発させても、問題解決にはならない。再度、時間をあけて同じような問題が必ず発生する。それ以上に、問題が膨らんでいく。悪いことに部下は新たなことをしようとしなくなる。自分ができる範囲のことだけをやろうとしはじめる。リーダーから指示されたことだけをやろうとするようになってしまう。リーダーから怒られない下限を見極めようとしはじめる。「自分のできる範囲のことであれば、大きなミスはしない。怒られない」「リーダーから指示されたことだけをやっていれば、もしミスがあっても『指示をしたリーダーが悪い』『私は悪くない』」と他責にすることができる。その結果、何かがもし起きた場合に、リーダーがその場ですぐに納得できる“言い訳”をたくみに思考する習慣がついてしまう。言い訳上手な部下は、リーダーが育成してしまったと考えて差し支えないです。

現場のリーダーから「うちの部下、新たなことをやらないんです。すぐ守りに入るんです。なんか、いい方法ないですか?」や「部下の〇〇さんなんですが、指示しことしかしないんです。どうしたらよいですか?」と問い合わせられることがあります。この原因はリーダーにもあることを伝えている。当然、部下にも問題はある。しかし、リーダーの役割は部下のできることを増やして、自発的にし、自律してもらうこと。そう考えると、まずはリーダー自身の思考と行動を変えていく必要がある。

大切なことは「1.やり方を具体的に伝える」「2.見守る。できているを伝え、改善点を示唆する」「3.具体的な振返と先読の想像を促す問いをかける」。リーダーが部下のできることを増やす。部下が自発的になる。それから、相手の立場から思考と想像ができるように関わる。部下の戦力化で“イライラする”時間と“悩む”時間を最小化するために。