相手が手ごわい場合は、できるようにしようとしない

できるようにしようと頑張っても無駄が多くなります。まずは、彼ら彼女たちの行動と思考の特性を知ることからはじめたいです。「できていないのに自分はできると思っている」「頭でわかったことは行動できると錯覚する」「失敗しても責められないことがわかると行動をはじめる(悪く見られたくない)」「目の前の業務の中で必要最低限のことだけを行う(叱られない下限にあわせる)」「正解・ハウツーを求める。試行錯誤はしない」「抽象度の高いインプットやスキルを具体的な行動に変換することができない」「1度上手く行ったやり口で対処処理を続ける(目先の効率を優先。立止まり振返らない)」「自分の立場からでしか想定ができない」

これらが彼ら彼女たちの主な行動と思考の特性です。過去に行動変容で関わらせて頂いた約32万人の行動データにもとづいています。ある程度の信ぴょう性はあると考えています。これらの特性を、直接、変えようとしても変えることができません。直接、変えたいと思い「〇〇はやめてください」「なんで、〇〇なの?」と注意する、原因を追究しても、変わりません。具体的に何をしたら良いかがわからないためです。意識を高く持っても、高いビジョンを掲げても、念じても、できるようにはなりません。具体的な思考や行動が変わらない限り、マインドや意識は変わりません。

相手がメモに取らなくても、自動的に記憶できるレベルの勘所だけを伝えてください。できの悪いと括られる部下の多くは、対人面で問題行動をするケースが圧倒的に多い。10人中9人以上はそうです。社会的スキルをみにつけようと言っても、そもそも、取り組むわけはない。自分にとって負担感が少しでも発生することはやらない。「話をするとき、2倍の大きさ、1/2のスピードでやってみると良いよ」であれば、すぐに記憶できる。「2倍、1/2」。あるタイミングで、この部下が示唆・アドバイスした行動をやる時があります。その際に「〇〇さん、とても聴きやすいよ!いいじゃん」のような行動を承認してあげる。この承認が報酬になり継続するスイッチになります。

ポイントは相手にとって負担感を極力さげてあげる。しかし、「こんなことをやっていたら、いつまでたっても自律してくれない、戦力にならない」と想うと思います。1回で良いです、試して欲しいです。はじめはとてもゆっくりな成長です。しかし、対人面で小さな行動を変えてみると、周囲の反応が今までよりもよりも良くなります。その良くなった周囲の反応が報酬になり、他の行動や思考を変えてみようとする動機が芽生えます。リーダーに対して反応もよくなります。リーダーも人間です。この部下を何とかしてあげようと思い始めます。今はできの悪い部下が良くなりはじめるまでに6か月程度はかかります。これを長いとみるか、短いとみるかは、リーダーが何を目指しているかに依存します。

できが悪いと思われていた部下の方が、できが良いと思われていた部下よりも、数年後に立派なリーダーになることの方が多いです。できない人の気持ち、できない人が陥る落とし穴、できるようになる勘所を身をもって身体感覚でわかっているからです。